芸事の基本は、上手な人の真似をすること。これは、正しいことで、何も間違っていません。
楽器も例外ではありません。上手な奏者の真似をすることは、演奏技術を向上させるのに大切なことなのです。
でも、実は真似をするには、コツが必要。
ただ単に何も考えず、やみくもに真似をするだけだと、大きな落とし穴にはまってしまうかもしれませんよ。
ただ単に上手な奏者の真似をする危険性
今は、YouTubeなど、インターネットで一流の奏者が演奏している姿を、無料で見ることが出来ます。
「こんな風に演奏できるようになりたい」
こう考えて、その奏者の演奏スタイルをそっくりそのまま真似をする。これは、一見正しそうですが、危険な場合もあります。
何が危険なのか。
基礎を理解せずに演奏することになってしまう可能性があるんです。
なぜ腕をこのように使うのか。なぜこのように楽器を構えるのか。なぜこういう動きになるのか。
こういう理屈が分からないまま、形だけ真似をしても、同じように弾けるようにはなりません。むしろ、自分に合わない方法で演奏してしまって、体を壊すことになる可能性も。
プロの演奏者は最初、先生に師事して基本を教えてもらいます。そこから、自分が弾きやすいように演奏スタイルをアレンジしていっているはずなのです。つまり基本は、押さえた上で、自分流で演奏しているのですね。
それを理解せずに、その奏者が試行錯誤して少しずつアレンジしていった結果の形だけを真似する。
これは、基礎を飛ばしていきなり応用に手を出すようなもの。上手くいくことの方が珍しいと思います。
では、どのように真似をするべきか?
私は、上手な奏者の真似をするときは「なぜそうしているのか」を理解することが大切だ、と考えています。
例えば、教則本に書いてある言葉に「弓は弦に対して直角に構える」というものがあります。
ただ、プロ奏者の中には、弓が弦に対して斜めになった状態で、演奏している人がいます。
そういう奏者は、最初は直角に演奏していたけれども、少しずつ自分が弾きやすいように、斜めにしていったはずなのです。
人は、一人一人体格も年齢も違うし、筋力も違います。その人にとっては、弓を弦に対して直角にして演奏するよりも、斜めにする方が、無駄な力を使わずにリラックスして演奏できる。
だから斜めに構えているのです。
なので、それを理解せずに真似をして、単純に斜めに構えて演奏してしまうだけだと、そのスタイルで演奏をするメリットがなくなります。
真似をするときのコツは、なぜその人がそう演奏しているのか。メリットは何なのか。これを理解した上で真似をする、ということですね。
まずは基本を押さえること
個人的には、基本が分かっていない状態で真似をするのは、上達の遠回りになる、と思っています。
基本を押さえていなければ、なぜそのような動きになるのか、分からないはずですから。
真似をするのにも、技術が必要なのです。